白石の書『戦犯潜行の七年』

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宮城県白石市に行くと、影の部屋の祖父の本棚からよく本を借りてきます。祖父は私が高校生のときに亡くなってしまいました。

今回は『戦犯潜行の七年~元海軍参謀の手記~』斉藤利夫著という、私が生まれた年に発行になった本を借りてきました。白石生まれで白石中学を経て海軍兵学校に入った男性の数奇な運命をたどった書です。この方の子孫の方々には今もたいへんお世話になっているので、驚きとともに読みふけりました。もう入手がなかなかできない本だと思いますのでちょっと詳しくご紹介したいと思います。

1945年の終戦後、突如GHQの呼び出しを受け、斉藤さんは戦犯ということになりました。自分より上の階級の人が全て亡くなり、誰かが戦犯にならなくてはならなかったと分析しています。東京まで事情を説明しにいき、安心して東京の夜を楽しみ、宿に帰宅してみると、事情聴取の際に通訳を担当した女性が5時間も立って待ってくれていました。携帯電話などない時代です。

聞けば、斉藤さんを戦犯容疑者として逮捕する旨、小耳にはさんだというのです。この日から、斉藤さんの7年間にわたる潜伏生活が始まります。このとき、自分で考えた潜伏の掟など、兵隊として培った訓練の賜物のような行動に出ます。マッカーサー元帥に直訴状を書きながらの逃亡生活。ご存知、降伏文書は丈夫な白石和紙で作られていた裏で、白石出身の元兵士がたいへんな目にあっていたのが皮肉です。

逃亡中、様々な職につきますが、斉藤さんはきちんと働きすぎて、いつもうっかり昇進してしまいます。身元を証明する書類を求められる度に自分を雇ってくれた恩人に挨拶もできず夜逃げする日々。偽装自殺に成功し、新聞には死亡記事が載ります。しかし、斉藤さんの奥さまは、自分のだんなさんがこんなことで自殺をするわけがないと、実は生きていることを疑わず、夫の帰りを待ち続けます。この間も奥様とお子さんは牢獄に1か月入れられて質問されたり、非常に過酷な生活をしています。

斉藤さんは大胆不敵にも得意の英語を生かし、横浜米軍基地でも働くようになります。このとき、なんと旧友に偶然会ってしまいますが、旧友は最後の最後まで斉藤さんの目撃を誰にも言わずにいてくれました。ちなみにこの旧友たちも斉藤さんのせいで連日の家宅捜索などたいへんな目にあっているにも関わらずです。

昇進する度に逃亡するのを避けるため斉藤さんは自分で社交ダンスの教室も開き、生徒がものすごく集まるようになりました。ヤクザのお礼参りも海軍で鍛えた身体でかかんに立ち向かいます。無理がたたって結核になってしまうのですが、その手術方法がとんでもない。当時は病院で輸血の準備をすることがなかったので、斉藤さんは自分で輸血を手配したお蔭で一命をとりとめますが、その血が合わずさらに療養生活が続きます。なんと斉藤さんは結核病棟でも慕われ、患者会の会長になり、患者の待遇改善を成し遂げました。

戦犯逮捕令取り消し後、さらに1年間は念のため隠れてから晴れて家族の元へ。私のブログは斉藤さんの7年間を語りつくすにはまるで足りず、映画化というより、連ドラ化にも適したような本当にすごい一冊でした。

そんな経験をしながらも最後には海軍礼賛のためにかなりのページが割かれており、やはり時代感覚の違いから息子さんとはなかなかうまくいかなかったようです。この点もいろいろと考えさせられるものがありました。


2014年5月22日

コメント

しとろん2014年5月22日

私の知り合いが、マッカーサー元帥が横浜に滞在した際にお迎えした旧逓信省のお役人のご子孫らしいので、それでは白石和紙をプレゼントしようかと思ったけど、とりあえず他の和紙を差し上げたのがバレたら怒られると思ったので今まで黙っていましたごめんなさい

トキメィキボー2014年5月23日

ドラマティックなストーリーですね…(゚д゚)!実写化希望に挙手!行方知れず…で想うのは元同僚で同級生、新潟中越沖地震のボランティア後、消息不明です…また、郷里のお隣さんの御子息さん秋のおわり、仕事につまずきひとり散歩に出たきり、いまだ連絡とれていません…形はかまわない、どうか生き抜いてほしい…皆が願っております(>_<) 二十代の頃、就活で落ち込んでいた時、親類の物書きが出版した本で励ましていただきました。その本、タイトルが『どん底のうた』…その出来過ぎた展開にメマイをくらうばかりでした(*_*)

TAKAじい2014年5月23日

下の位の者が戦犯の身代わりにされてしまうのなら「私は下位になりたくない」

ジョー2014年5月28日

新田丸を調べていたら… “最古の艦娘”とか┐(´д`)┌

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