『石川五右衛門の法事』考

坂本頼光弁士がご自宅にスクリーンと弁士台を設置し(!)、活弁の公演を配信しています。私は『石川五右衛門の法事』をどなたの活弁も拝聴したことがないまま、昨年、国立映画アーカイブ「こども映画館」でネタおろしをしました。今回、頼光弁士の活弁を拝見しましたところ、「弁士によってあらすじまで変わることがある」を目の当たりにすることができました。本作の配信は明日までです。

本当はもっと早くにご紹介したかったのですが、配信が終わってしまう前に…と、娘のお昼寝の合間をぬって、全編、文字起こししていたため、今日になってしまいました。文字起こししてみるとさらなる発見がたくさんあり、頼光弁士の語彙の豊富さに圧倒されます。時節柄、制約ばかりの日々ですが、ライブでは書き起こすわけにいかず、活弁の期間限定配信を享受しつくした気分です。

私が得意とする(?)飛び道具的な活弁による違いではなく、本質的な部分で解釈・演出が違います。頼光弁士の台本では吾郎さんは初めから自分の先祖を知っていて、私の台本では石川五右衛門が現れたときに知る。主人公でありながら殺されたのか生きているのかよくわからない吾郎さんの描き方は、頼光弁士版は“人間より”で、私の説明では”幽霊より”です。そのほかのシーンも字幕部分以外、同じ台詞は見当たりませんでした。

ここまでの違いはナンセンス喜劇の王様、斎藤寅次郎監督作品だから起こった現象でもあると考えられます。どちらが合っているとか間違っているということではなく、斎藤寅次郎監督でしたら天国でどちらの活弁もきっと笑ってくださっていると思います…!

私の活弁は、スクリーンに向かってツッコミを入れるのも特徴ですが、それをすると本作はキリがなく(笑)、また「これはいったいなんだ?」とか「わけがわからない」と指摘してしまうと、寅次郎監督のナンセンスな世界に敗北してしまうようで悔しいので、あえて封印してみました。

ヒロインの父親が古物商であることを生かし、「こども映画館」であることはもう気にせず(汗)あらゆる小道具にあえて意味を持たせてみたら、筆が一気に進んだことを思い出します。坂本君の活弁を見て、私もますます再演したくなりました。

映画『カツベン!』6月10日にDVDが発売です。また営業を再開し始めた映画館では『カツベン!』の上映が行われている地域もございます。本日の写真は、映画『カツベン!』ロケのときのもの☆

私もYouTubeで独演会の模様を一挙公開しています。『雷電』も『キートンのセブン・チャンス』も、弁士によって全く印象が変わると思いますので、是非聞き比べてみてください。

『石川五右衛門の法事』考” に対して1件のコメントがあります。

  1. TAKAじい より:

    石川さゆり さんが天城越えで過去の自分を超えていく、略して石川超え、石川超え、石川超えもん(無理くりこじつけ)。。。喜劇の神様 笑いの巨匠 齋藤寅次郎監督の『石川五右衛門の法事』、これには突貫小僧も出ていたんですね。頼光さん、ご自宅での活弁を配信ってさすがですね。個人的にはバニラさんと娘さんの「手洗い動画」と「パプリカの振り付き動画」が見たいです。もちろん活弁動画もね。

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