『活動写真弁史』片岡一郎著

かねてより学者弁士の異名を持つ片岡一郎弁士がついに本を出されました!『活動写真弁史 映画に魂を吹き込む人びと』(共和国)。10月30日に発行となり予約注文していたのですぐ手元にまいりましたが、厚さ5cm、重さ900gの大著で、寝ながら読むのも重い。これではいつまで経っても読み終えられないので、ついに持ち歩くことに。ブックカバーもサイズが合わず、映画『カツベン!』で一郎弁士が指導なさった高良健吾さんの帯をつけたまま宣伝して歩いていました。

写真は先日のスクエア荏原独演会のときで、まだ前半までしか付箋がはっていませんが、このほどついに読破。辞書的にどこからでも読めるのですが、やはり最初から通しで読むと、活動写真弁士の歴史のうねりを体感できて、最後に映画『カツベン!』の周防正行監督の素晴らしい解説文。一郎弁士と20年間、切磋琢磨してきた私も感無量です。これを2年で書いたというからすごい。パフォーマーとしても第一線で活躍しながらですよ?!

江戸川乱歩が弁士に弟子入りを申し込んだ話、徳川夢声の名調子に感化されて起きた殺人事件により夢声が裁判所に呼び出された話など「へ~!」というエピソードも満載です。

現役弁士が書いた弁士の歴史本なだけあって、解説そのものが名調子です。例えば「活動写真文化は大衆芸能に欠かすことのできない俗悪の魅力を得て大輪の花を咲かせんとしていたのである」。私が自作動画『活動写真いまむかし』でご紹介しているイケメン弁士・生駒雷遊の靴がおひねりですぐにいっぱいになったエピソードでは「日本最大の歓楽地浅草といえども、仏様とお賽銭の額を競った芸人は雷遊のみで、彼は名実ともに浅草の顔となっていった」こんな感じなので、分厚くてもスラスラ読め、私は「いや~、うまいなぁ」とうなってばかりでした。

「無声映画全盛時代の弁士」とひとくくりにされがちですが、お笑い芸人さんのように「第一世代」から「第三世代」に分類・分析。

やがてトーキー時代がやってくると弁士がストライキを起こしたことは有名ですが、それが実は資本主義と社会主義の代理戦争であったことまでは知りませんでした。上映中に突然、スクリーンの映像が占拠され、逃げるために入り口に殺到する観客の様子など、臨場感あふれます。

職を失った弁士の中で、山田無声は俳優に転職し、北竜二と改名。小津安二郎監督作品の常連になったとは、弁士嫌いと言われていた小津監督の意外な一面を垣間見ることができました。

わりと近年、1992年の北海道の映画祭で、「伍東宏郎」と無声映画時代の人気弁士の名前を名乗って活弁した弁士の正体がいまだ不明というのもびっくり仰天!

私のTwitterのタイムラインでは『鬼滅の刃』より確実に大ヒットしている『活動写真弁史』、是非一家に一冊。活弁界発展のためにも…。

『活動写真弁史』片岡一郎著” に対して1件のコメントがあります。

  1. TAKAじい より:

    祇園精舎(ぎおんしょじゃ)の鐘の声 送料無料の響きあり・・・送料無料ってありがたい。。。平家物語、学生時代によく暗記したものです。諸行無常であります。片岡一郎弁士すごいですね!重さ 900gってこのじじぃの小さな脳みそ位の重さがありますね~。バニラさんもまたいつか何か本出してね。

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