舞台『SLAPSTICKS』

2月17日まで日比谷シアタークリエで上演中の舞台『SLAPSTICKS』を先日観劇してきました。サイレント・スラップスティック・コメディの歴史が実在・架空の登場人物によって描かれた作品です。こちらKERA CROSS第4弾で、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんの作品を、今回は劇団ロロの三浦直之さんが演出。

世界三大喜劇王も助演していた、無声映画最初期の伝説のコメディアン、ロスコー・アーバックルの大スキャンダルを軸に、マック・セネットやメーベル・ノーマンドの関係も描かれます。セネットとメーベルについては『臨時雇の娘』を活弁した際に、この時ばかりは私も前説映像を作ってお二人の歴史をご紹介しました。

ロスコー・アーバックルを演じたのはお笑いコンビはんにゃの金田哲さん。天才コメディアンならではの、狂気・孤独・優しさを体現、面白いシーンでも私は涙が止まらず二重マスクの内側がグチャグチャ。喜劇映画研究会代表・新野敏也さんの解説文目当てで購入したプログラムに書かれた役作りのエピソードなども興味深く拝読。肉襦袢を着て熱演された金田さんは、この役で何か受賞していただきたいです…!

ヒロインで無声映画伴奏者役の桜井玲香さんが、アーバックル本人から演奏の感想を言われるシーンには、現在の活動写真弁士としてはうらやましいようなちょっと怖いような。乃木坂46の元メンバーである桜井さん、非常に魅力的な舞台俳優さんでした。

感染対策で、客席もロビーも私語厳禁という厳戒態勢。サイレント状態の客席を逆手にとったセネット役・マギーさんの客席いじりはスリルもありつつ、お見事。

そして第二幕、舞台上では新たな”サイレント”が広がります。これはケラさんご自身が演出をした本作をご覧になった方はうなる三浦さんの新演出です。(私は2003年版の舞台をDVD鑑賞しておりました。)この新解釈がものすごい形で結実されたのには、終演後、感染対策のための分散退場で、自分の番になったこともすぐには気づけないほどの放心状態になりました。

無声映画史では「ハリウッドの笑いが止まった日」と呼ばれる大事件が語られる際、常に脇役で、ちょっと悪役のあの人にも人生があった。これは無声映画畑の人ではない、三浦さんだからこその新演出で、心からの拍手を送りたいです。

三浦さん率いる劇団ロロの俳優さん達も、複数の役を兼務しながら大活躍。そのおかげで、エピローグで世代交代した際に、悲しい最期を遂げた他の役も生まれ変われたような感動があり、これぞ演劇の良さだと思いました。また白塗りのコメディアンは最初、ラリー・シモンだと思っていたのですが、「ハリー」と呼ばれていたので、私の活弁で『初陣ハリー』をご覧くださった方は「ハリー・ラングドンもいる!」とマニアックに喜んでください♪

さて、史実では、不遇に見舞われたアーバックルを一番支えたのはバスター・キートンであったと言っても過言ではありません。そのキートンが出ないのはちょっと不思議だったのですが、本作の主人公である架空の人物、助監督・ビリーを演じた木村達成さん(青年時代)・小西遼生さん(中年時代)が、端正なお顔立ちでアーバックルの名誉回復に奔走する姿はときにキートンに見えました。当日券も出ているようです。

そして、舞台で無声映画にご興味を持ってくださった方は是非、弾き語り活弁もご覧あれ!
3月13日(日)14:00開演「山崎バニラの活弁大絵巻2022 ~ファンタジーの旅~」こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(新宿)。スラップスティックも満載の3本立てでお届けします☆

舞台『SLAPSTICKS』” に対して1件のコメントがあります。

  1. TAKAじい より:

    婚約時のようすについては今夜9時にお伝えします。。。バニラさんこれからも絶対に二重マスクを心がけてね。ハリーといえばハリー・キャラハン刑事もいるよん!

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